rock

2002年 アルバムベスト10!Part1

2002年は、リマスター作品が充実した一年でした。そんな中、ベテラン達の新作も登場、選に漏れたりマスター作品も多かったです。

No1. GEORGE HARRISON
No2. VAN MORRISON
No3. BONNIE RAITT
No4. THE BAND
No5. THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION
No6以降はこちら


GEORGE HARRISON 『Brainwashed』
TOCP-67074
1.Any Road
2.Vatican Blues
 (Last Saturday Night)
3.Pisces Fish
4.Looking for My Life
5.Rising Sun
6.Marwa Blues
7.Stuck Inside a Cloud
8.Run So Far
9.Never Get Over You
10.Between the Devil and the Deep Blue Sea
11.Rocking Chair in Hawaii
12.Brainwashed
ジョージハリスンは、闘病の末、2001年11月29日、59歳で亡くなりました。
本作は、ジョージハリスンが1999年から死の2ヶ月前までかけて収録した作品を仲間のジェフ・リンと、ジョージの24歳になる息子のダニーのプロデュースによりまとめ上げ、完成させたものです。
「ジョージ、元気じゃないか」。一聴して思うのはそのことばかりです。ジョージの声を聴いても、アコギを聴いても、ウクレレを聴いても、スライドを聴いても、その思いが繰り返し繰り返し頭の中を駆け巡ります。そして、「じゃあ、なぜ。。。」。この自問自答を繰り返してしまうのです。それほどはつらつとしたジョージがそこにいます。しかし、アルバム全体を通じて歌われている内容はやはり自身の人生、死を予期した心境など極めて重いものです。このギャップに胸が詰まるのです。
本作は、全体的には「トラベリン・ウィルベリーズ」や「ゴーン・トロッポ」などで展開されたアコースティックな雰囲気を持っていますが、大きく異なるのが、ジョージのボーカルが充分に歌いこまれていることと、ギターソロがとても充実していること。演奏や歌はとても丁寧に作りこみがされていて、ジョージの音楽に対する誠実な姿勢が伝わってきます。作曲の過程で推敲を重ね、練りに練った上でのレコーディングだったんだろうなと思います。それと、ジェフ・リンも今回は、ジョージの魅力を出し切ることにだけ専念したような素晴らしい仕上げを行っています。
「1」は、ジョージの死を思えばとても重い歌詞なのですが、カントリータッチでジョージらしく軽快にまとめています。随所で見せるソロは、最小限、かつ簡潔にまとめるというこれまた実にジョージらしい演奏。ウクレレのようなバンジョーのようなバックのギターが実にいい雰囲気を出しています。
「クラウド・ナイン」に通じる雰囲気を持った「2」は、ジョージのソロが全編にフューチャーされています。過去を通じてほとんど記憶がないくらい「弾きまくって」います。でも音選びはもうこれ以上は減らせられない位シンプル。
「3」は、「魚座」である自分の人生を歌った作品。「4」も同様で、自身の死を予期しているような内容も含んでいるのに、ポップな曲調でまとめています。「1」もそうであるように、本作を象徴するようなギャップの大きさを感じます。やはりジョージにとって、ポップミュージックこそわが人生だったんだと思います。
「5」はウクレレとスライドのゆったりとしたサウンドに包まれ、生き抜くことにポジティブなジョージの姿が伝わってくるような美しい作品。
「6」はインストルメンタル。或いはボーカルを乗せる予定もあったのでしょうか。ジョージのスライドここにあり。ジャニス・ジョプリンの同じインストルメンタル「生きながらブルースに葬られ」を思い浮かべてしまいます。
「7」は、歌詞がとてもつらい内容なのに、ジョージのボーカルがとても穏やかであることに胸が詰まります。
「8」は、全く気がつかなかったんですが、アルバム「ジャーニーマン」(ほとんど聴いてなかったことが分かる。。)のためにジョージがエリック・クラプトンに提供した曲。「ジャーニーマン」バージョンでのクラプトンによるメロディアスなギターもいいですが、本作のバージョンを聴いてしまうとこの曲にはよりシンプルなこちらのバージョンがあっているように感じます。ひいき目かな。
「9」はスライドやジョージのボーカル、メロディと全てが美しい作品。「あなたのことは忘れない」と言うジョージ、「僕のことを忘れないでいてくれ」とも思っていたであろうに、曲の美しさがそういった悲しさを打ち消します。
ウクレレで始まる「10」は、12月に来日したポールが「サムシング」を演奏する際に披露した、「ジョージはウクレレの達人でよく聴かせてくれた」というエピソードを思い起こしてしまいます。オールディズナンバーをジャジーな雰囲気も絡ませて聴かせます。
「11」はスローモーションにしたかのようなジョージのボーカルがおかしい一曲。まさにロッキング・チェアーに揺られているかのよう。
DVD、ポスター、ピックなどおまけ付きのアメリカ盤

ラストとなる「12」、「洗脳」と言いながら社会を批判する姿は、皮肉屋ジョージらしい一面を感じさせます。本作でも最もハードなサウンドですが、後半はインド音楽になって、あたかも祈りを捧げているかのよう。それは自身のためになのか、それとも社会の今後を憂いてのことなのか。
こうして本作は幕を閉じます。通算でも50分弱と収録時間は昨今では決して長くはないですが、内容は素晴らしく、かつ、重い。今まで、アーティスト自身が自らの人生と、直面する死を歌った作品が他にあるのでしょうか。しかも、かくもポジティブに。ジョージは又近いうち、次回作を発表してくれる、そんな期待をせずにはいられないのです。
一点だけ残念だったのはジャケット。ジョージがこのジャケットを気に入ったのかどうか、知る由もありませんが、音楽についてポジティブだったジョージの姿を反映しているようには思えないのです。

VAN MORRISON 『Down the Road』

(*)ボーナストラック
ポリドール UICP-1033
1.Down the Road
2.Meet Me in the Indian Summer
3.Steal My Heart Away
4.Hey Mr DJ
5.Talk is Cheap
6.Choppin' Wood
7.What Makes The Irish Heart Beat
8.All work and No Play
9.Whatever Happened to PJ Proby ?
10.The Beauty of the Days Gone By
11.Georgia on my Mind
12.Only a Dream
13.Man Has to Struggle(*)
14.Evening Shadows
15.Fast Train
ダウン・ザ・ロード、ヴァンがロードに戻ってきた、そんな期待に胸が躍るタイトルです。ジャケットが又いい。「レイ・チャールズ」「ルイ・アームストロング」「ジェームス・ブラウン」「マディ・ウォーターズ」「ライトニン・ホプキンス」「カール・パーキンス」「BBキング」「ハンク・ウィリアムス」「サム・クック」など私が名前だけは知っているアーティスト達の他にも数多くのアーティストのアルバムジャケットが並べられたレコード店の様子、言うまでもなくヴァンにとっての大先輩達に敬意を表しているんでしょう。オリジナルアルバムとしては99年の「バック・オン・トップ」が前作になる訳ですが、それ以降、ロニー・ドネガンとの共演による「The Skiffle Sessions」でスキッフルを、リンダ・ルイスとの共演アルバム「YOU WIN AGAIN」でカントリーを、と自らのルーツを確認するかのような活動を展開してきた彼が、まさに「ロード」に戻ってきたのが本作となります。
アルバム全体に流れるのは、やはり自らのルーツをたどるような雰囲気。要するにアルバムジャケットがそのまま音楽になっているんですね。カバー曲は「11」「14」だけなのに、どの曲もオールディズなのかと勘違いしてしまうくらい。アルバム全体に流れるリラックス感と、ゆったりとしたグルーブが土台になりつつも、個々のメロディが素晴らしい上、ヴァンのボーカルがこれまで以上に力強く、ヴァンの健在さを強く感じさせる作品となっています。
「ダウン・ザ・ロード」のリフレインが延々と続く「1」は、いきなりヴァンのハーモニカで始まります。ヴァンの息遣いすら聞こえるハーモニカがいい。又、単純なリフレインで徐々に盛り上げる手法はまさにヴァンの18番といったところ。
ジャジーな雰囲気の「2」は、トランペット、サックス、ピッコロ、ハモンドオルガンなどのバックと、軽快に歌うヴァンの絡みが素晴らしい。
「3」はフルートに乗せて歌われるバラッドですが、メロディもとてもよい曲。ヴァンのアコギも実にいい感じだし、波が打ち寄せるようなピアノが又素晴らしい。
「4」はブギー調なんですが、ストリングスがサム・クックの「ユー・センド・ミー」のようで、ニヤリとさせます。バックのコーラスがドゥ・ワップみたいで楽しいし、この雰囲気、いいですね〜。
「5」はブルース。やはりヴァンのハーモニカの使い方が、ここは普通ギターでしょう、と言うところで使っていて、実にかっこいいのです。で、ソロがバイオリン〜ハーモニカと続く。ボーカルも凄みがあって、シビレます。
「6」ではギターとクラリネットがサポート。ヴァン自らがセッションを楽しんでいる様が目に浮かぶようです。
「7」はアイルランド人である自らを歌った作品であるようで、アイルランド人讃歌でもあるよう。歌はとても力強いんだけど、全体にはリラックスムードが漂っています。
「8」はヴァンのボーカルをコーラスが後追いすると言う、オールディズでも聴いたことのあるような雰囲気の曲。
「9」はバリトンとハモンドオルガンによるミステリアスなバックに乗せて、ヴァンがやはりミステリー調に聴かせます。
「10」は凄みのあるボーカルとともに演奏が徐々に盛り上がりを見せる壮大な曲。ボーカリストとしてのヴァンの魅力が炸裂しています。
「11」はいわずと知れたカバー曲。リチャード・マニュエルのカバーもいいけど、こちらも情感溢れるボーカルがしみます。
「12」は「たかが夢」「されど夢」というようなことをハチロクビートに乗せて歌うのですが、ヴァンの力強さに勇気付けられます。
「13」では男のありようみたいなものが繰り返し繰り返し歌われます。
「14」はアッカー・ビルクというクラリネット奏者の曲のようで、彼自身も参加しています。
「15」はラスト曲にふさわしいスケールの大きさを感じさせる曲で、あたかも人生を特急電車にたとえ、生き急ぐ人間の姿を歌っているようでもあります。
とまあ全編そんな感じで、恐らくジャズやオールディズに造詣の深い人なら随所に「にやり」とさせる要素が詰まっているのではないかと思われます。しかし何はさておきヴァンが健在で、精力的に音楽活動を継続していることが強く感じられるのが本作です。次回作ではどういった展開を見せるのか、ますます楽しみにしたいと思います。


BONNIE RAITT 『SILVER LINING』
Capitol TOCP-65964
1.Fool's Game
2.I Can't Help You Now
3.Silver Lining
4.Time of Our Lives
5.Gnawin' On It
6.Monkey Business
7.Wherever You May Be
8.Valley of Pain
9.Hear Me Lord
10.No Getting Over You
11.Back Around
12.Wounded Heart
ボニー・レイットの、前作「ファンダメンタル」に続く、4年ぶりの新作が発表となりました。昨年がデビュー30周年!名作のセカンド「ギブ・イット・アップ」が発売されたのが1972年ですから、今年は「ギブ・イット・アップ」発売30周年と言うことになります。ベテランは元気元気!
さて、本作ですが、まずヂャケットの妖艶な雰囲気に驚かされます。色っぽいを超えて、怖いと言う説も。まあ、お年もお年でしょうから(^^;。ま、何はともあれ、肝心なのは内容です。

前作「ファンダメンタル」は、ボニーにとっての原点であるブルース&アメリカンサウンドを見つめなおしたような名作でした。ややくぐもったサウンドと深みのあるボーカル&スライドギターで、とても味わい深い作品となっていました。
本作は、そうした前作の作風とは異なる趣を持っています。前作同様、奥行きの深さと多様性を持つアメリカンサウンドをベースとしながらも、リズムセクションなどバンドサウンドに重点を置いており、バンド仲間と楽しくやっている彼女の充実感が伝わるような作品です。それでいて作品の内容が素晴らしい。コクのある名作です。
「1」がまずソウルフル&ファンキーなナンバー。強烈なリズムセクションにニューオリンズ風のピアノが絡み、重厚なグルーブを醸し出します。こうした本作のリズム志向は、ギターのカッティングが歯切れ良い「4」や「5」(ここのリードはロイ・ロジャーズという人物らしいです)、「6」「10」などでも顕著です。その間に挟まれるスローナンバー(「3」「7」「12」など)は、従来の手法を踏襲したものですが、ファンクなサウンドに挟まれているだけに余計しっとりしたサウンドに聞えます。メリハリある曲の配置が又、本作を表情豊かなものにしているのではないでしょうか。
特に後半の幕開けとなるスローナンバー「8」ですが、まず曲が素晴らしい。作者はアラン・シャムブリンと言う人らしいです。そして、ハートフルながらも決してシャウトにならず、それでも心を打つ彼女のボーカルの表現力がやはり見事。そしてスライドが響き渡るというファンならたまらない構成です。本作にずっしりとした重みを加えるような重要な曲だと思います。
「9」はアンディ・アバドという人物のリードがなんともアフリカンテイストなナンバー。前作でも試みられていた手法ですが、本作ではより本格に取り組んだようで、「11」に至っては聞きなれない民族楽器も奏でられます。
このように、あくまでベースとなっているのは、彼女が積み上げてきたキャリアを感じさせるサウンドながら、過去の成功にしがみつくこともなく新しいサウンドにチャレンジし、結果的に素晴らしい作品をつくりあげています。『ニック・オブ・タイム』の成功から早13年。しかしまだまだこれからも素晴らしい歌と演奏を聞かせてくれそうです。
それにしても、本コーナーで取り上げるヴェテランたちの多くがそうなのですが、こうした素晴らしい作品を聞くに付け、アメリカ&イギリスのミュージシャンは、やはりロックが体に染み付いているんだなあとつくづく思うのです。借り物の音楽ぢゃないんですね。そんなミュージシャン達の作品をこれからも追い続けて行きたい、と、つくづく思います。


THE BAND 『LAST WALTZ (BOX) 』
Member            (*)Previously unreleased

ディスク: 1

1.Theme From The Last Waltz (w/ Orchestra)
2.Up On Cripple Creek
3.The Shape I'm In
4.It Makes No Difference
5.Who Do You Love (w/ Ronnie Hawkins)
6.Life Is A Carnival
7.Such A Night (w/ Dr. John)
8.The Weight (*)
9.Down South In New Orleans (w/ Bobby Charles)
10.This Wheel's On Fire (*)
11.Mystery Train (w/ Paul Butterfield)
12.Caldonia (w/ Muddy Waters) (*)
13.Mannish Boy (w/ Muddy Waters)
14.Stagefright

RHINO R2 78278
The first issue
Bootleg

ディスク: 2

1.Rag Mama Rag (*)
2.All Our Past Times (w/ Eric Clapton) (*)
3.Further On Up The Road (w/ Eric Clapton)
4.Ophelia
5.Helpless (w/ Neil Young)
6.Four Strong Winds (w/ Neil Young) (*)
7.Coyote (w/ Joni Mitchell)
8.Shadows And Light (w/ Joni Mitchell) (*)
9.Furry Sings The Blues (w/ Joni Mitchell) (*)
10.Acadian Driftwood (*)
11.Dry Your Eyes (w/ Neil Diamond)
12.The W.S. Walcott Medicine Show (*)
13.Tura Lura Lural (That's An Irish Lullaby) (w/ Van Morrison)
14.Caravan (w/ Van Morrison)

ディスク: 3
1.The Night They Drove Old Dixie Down
2.The Genetic Method/Chest Fever (Excerpt From Movie Soundtrack) (*)
3.Baby Let Me Follow You Down (w/ Bob Dylan)
4.Hazel (w/ Bob Dylan) (*)
5.I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met) (w/ Bob Dylan)
6.Forever Young (w/ Bob Dylan)
7.Baby Let Me Follow You Down (Reprise) (w/ Bob Dylan)
8.I Shall Be Released (Finale)
9.Jam #1 (*)
10.Jam #2 (*)
11.Don't Do It (*)
12.Greensleeves (From Movie Soundtrack) (*)

ディスク: 4
1.The Well
2.Evangeline (w/ Emmylou Harris)
3.Out Of The Blue
4.The Weight (w/ The Staples)
5.The Last Waltz Refrain
6.Theme From The Last Waltz
7.King Harvest (Has Surely Come) (*)
8.Tura Lura Lural (That's An Irish Lullaby) (w/ Van Morrison) (*)
9.Caravan (w/ Van Morrison) (*)
10.Such A Night (w/ Dr. John) (*)
11.Rag Mama Rag (*)
12.Mad Waltz (Sketch Track For "The Well") (*)
13.The Last Waltz Refrain (Instrumental ) (*)
14.The Last Waltz Theme (Sketch) (*)

おととしから昨年にかけて怒涛のリマスターラッシュとなった「ザ・バンド」ですが、ついに「ラスト・ワルツ」が未発表曲24曲を追加の上、リマスターされ再発売となりました。待ちに待ったコンプリートエディションの登場です!(T_T)
といいたいところですが、実は数曲の未発表曲がまだ残っています。何でそんな中途半端なことをするのか、ロビー・ロバートソンがその演奏を気に入らなかったとか、収録時間の関係とか、色々考えられますが、いずれにしても邦盤に付けられている「完全盤」という表現は適切とはいえないのです。もうひとつ、曲順も本来の演奏曲順ではありません。本作ではザ・バンドとゲストが主役を交代交代し進行していくようになっていますが、本来の演奏順ですと、ザ・バンド12曲〜ゲスト16曲〜ザ・バンド5曲〜ボブ・ディラン5曲〜全員3曲〜ザ・バンド1曲となります。未発表曲や本来の演奏曲順による演奏については海賊盤で聞くことができます。なお、海賊盤をよ〜く聞くと、ギターやホーンサウンドが随所で正規盤と異なっていることに気がつきます。正規盤制作にあたりかなり手を加えていることがわかるのです。

何はともあれ、大量の曲が追加され、高音質で蘇ったことをファンとしては素直に喜ぶこととしましょう。「ラスト・ワルツ」コンサートが開かれたのは1976年11月。そして本アルバム(当初は2枚組みでした)が発売されたのは1978年。それまでザ・バンドは「ザ・ウエイト」しか知らなかった私は、渋谷陽一の「ヤングジョッキー」というNHKFM番組の新譜情報で本作を知りました。ゲストは小倉エージ氏。エージ氏はいささか興奮気味でした。そして放送されたいくつかの曲。それまでは熱血ハードロック&パンクロック少年だった私は、本作で初めて「ヴァン・モリソン」や「ジョニ・ミッチェル」、「ドクター・ジョン」などの音楽を知ったのです。又後に見た映画で最も印象的だったのはメンバーが見慣れない楽器をとっかえひっかえ、演奏することでした。ロックといえばギター&ベース&ドラムと思っていた私に、もっともっと奥の世界があるんだよ、と教えてくれたこの作品は、間違いなく、私に見知らぬ音楽の世界への門戸を開いてくれたのです。そこで繰り広げられているのは、これまで彼らが見つめ続け、あこがれ続けた壮大なアメリカ音楽の世界だったわけですが、当時の私には知る由もありませんでした。
ま、私のことはともかく、ザ・バンドにとって本作は、タイトルどおり、「ラスト」ライブとなりました。しかし、このライブが他のバンドのラストライブと異なるのは、綿密な計画の下このプロジェクトが進められ、映画化もなされたということです。開催日は11月25日の感謝祭。天井にはシャンデリアが吊るされ、観客にはディナーの席も設けられるなど演出も徹底していたようです。そしてこのプロジェクトのために大勢の音楽仲間が集められました。ザ・バンドの卒業式をみんなで盛大に盛り上げるといったところでしょうか。このプロジェクトが組まれた背景にはメンバー間の確執を始め色々あったようですが、いずれにしても、リーダーであるロビー・ロバートソンの、ビッグイベントによりザ・バンドを伝説化したいという狙い通り、ライブは大成功を収め、映画やライブアルバム(サントラ)も高い評価を得る結果となりました。メンバー5人は「ラストライブ」と知りつつ、どんな思いを胸に秘めて演奏をしていたのでしょうか。

それでは、今回初登場となる音源を中心に見て行きましょう。
「1−8」は他のライブ音源に比べてもよりタメを効かせたドラム、リチャードのアグレッシブなピアノが熱い。当初はステイプルズがライブに駆けつける予定だったものの、スケジュールがあわず、やむを得ずステイプル参加バージョンをスタジオ録音「4−4」し、ライブではザ・バンドのメンバーで演奏したという逸話が残っているそうです。「1−10」はガース・ハドソンのキーボードとおなじみハワード・ジョンソンアレンジによるホーンセクションが絡むという憎い演出。間を縫うようにロビーのソロが唸りを上げる。熱い熱い!「1−12」で盛大な拍手とともに登場するマディ・ウオーター。野太いノドを唸らせます。途中のハーモニカはポール・バターフィールド。後半のマディとロビーとのギター共演も聴きもの。「2−1」は混沌としたホンキートンクイントロと収束の仕方がいつもながら見事。ホーンセクションはアラン・トゥーサンアレンジ。。「2−2」ではクラプトン登場。共作者のリック・ダンコと交互に歌います。「2−6」はニール・ヤングのハーモニカが美しい。「2−8、9」はジョニ・ミッチェル。この人のボーカルの浮揚感は誰にも真似できません。そしてそのカナダ勢のコーラスを伴っての「2−10」という展開。ザ・バンドメンバーのボーカルも沁みます。「2−12」はロック・オブ・エイジズ以上にホーンがフューチャー。テンポが上がっているのか、全体的につっかかり気味に感じます。続くヴァン・モリソンの「2−13,14」は何度聞いても凄い。どんな声だって出してやるという凄みを感じます。他の大物ミュージシャンの演奏や歌に触発されたのでしょうか。会場を自分の世界に強引に持っていくパワーに漲っています。そして絶妙にノドを使い分ける抑揚の素晴らしさ。聴くたびに鳥肌が立つ名唱です。「3−2」は本来10分以上ある演奏を編集にて短縮。もったいない、というか、ここまでうまく編集できる技術に感心します。「3−4」はディランによる情感あふれる曲ですが、ここではより感情をこめて歌っています。「3−9〜10」は全員集合による即興演奏。これも編集されています。「3−11」は、映画では冒頭に流されるアンコール曲にしてザ・バンドとしての最後の最後となる演奏。「まだいるのかい」「ハッピー・サンクスギビン」などの名せりふも収録されています。演奏のほうはロック・オブ・エイジズに比べるとスローテンポですが、ドラムのリズムの刻み方が面白い。リボン・ヘルムにはやや疲れも感じますが、「これがメンバー最後の演奏」という思い入れもあったのでしょうか、精一杯声を張り上げています。「3−12」は海賊盤でも聴くことのできない曲。ガース・ハドソンがトリを務めます。「4−7〜14」はリハーサル音源。「7」はライブ音源からカットしたお詫びに収録ということか。ライブ音源のほうは確かにリチャード・マニュエルのファルセットパートの声が出ていない他、途中で歌詞を忘れたのか、ボーカルが途切れてしまいます。「8〜9」はロビーに感謝したくなる、とても貴重な音源。ここでもヴァン・モリソンは声量目一杯に歌っています。「12〜14」はリハーサル過程を収録。「14」はロビーのギターのみによるもの。ギター3本をオーバーダビングしている様子ですが、なかなかいいです。


THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION 『PLASTIC FANG』

TOY'S FACTORY
TFCK-87280
1.Sweet N Sour
2.She Said
3.Money Rock 'N' Roll
4.Ghetto Mom
5.Alex
6.Hold On
7.Over And Over
8.Then Again I Will
9.Down In The Beast
10.Shakin' Rock 'N' Roll Tonight
11.The Midnight Creep
12.Like a bat
13.Killer Wolf
14.Mean Heart

Member
前作「ACME」では最前線のロックを演じきり、手法のすべてを出し切ったと思われたJSBXですが、この先何ができるのか、と思いきや、第6作目の本作は、一曲目、いきなりドストレートなロケンロールで幕を開けました。これぞ本物のロケンロール!以降、問答無用のロケンロールが超ド級のパワーで展開します。シンコペーションが利いたドラムの「2」「5」。神経症になりそうなギターの「3」。スピード違反気味の「4」「8」。バーニー・ウォーレル(ファンカデリック)のキーボードが憎い「6」。「6」にはドクター・ジョンも参加しているとのこと。この辺のゲストはプロデューサーのスティーブ・ジョーダンの貢献もあるようです。ハードブギの「9」。タイトルどおり、まんまロケンロールの「10」。ロケンロールにもまだやることが残されていた、ということに感動します。「11」は破壊的なドラムが聞き物。「12」「13」で従来の手法に近づきます。ラストの「14」は、プロデューサーがスティーブ・ジョーダンと聞くと、彼が同じくプロディースしたストーンズの「ダーティ・ワーク」を思い浮かべてしまう曲。初期ブルースのような趣を残しつつ、幕を閉じます。


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